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客観的評価の対象はここに示された可視的内容にとどまらず、操船者の内面的要素を評価の対象としている。特に、近年開発されるシステムの多くは、人間の肉体的負担や生理的負担を軽減させるよりも、知的負担の軽減を目的とするものである。知的負担の軽減を目的とするシステムの有効性を評価するためには、知的負担を直接計測できれば便利である。この目的のために利用される評価法として、副次タスク(2nd'ry task)による計測方法がある。この方法は船舶操縦を主たるタスクとするとき、主たるタスクの処理に余裕があるときに処理する副次タスクを設定し、副次タスクの達成状況から主たるタスクの負担度を推定する方法である。主たるタスクが知的負担を要するものであるときは、副次タスクも知的負担を必要とするタスクの設定をする必要がある。知的負担度の計測は、人間の内面的な活動状況を推定するもので、元来計測の難しいものである。しかし、副次タスクによる計測を注意して用いることにより、ある程度正確に知的負担の推定が出来ると言われている。
生理的評価法は、心理学や体育生理学の分野でよく利用される評価方法である。評価量としては次のものがあげられる。

 

心拍数
SNS値
PNS値
皮膚抵抗
体温
血圧
眼球運動
フリッカー値計測

 

生理的評価法は、人間が外部または内部から負担を受けたときに表す生体反応である。
たとえば、長時間の歩行や駆け足といった運動をすることにより発汗や息切れをしたり、狭い港内や航路上においては緊迫した状況が頻繁に生じ、緊張やプレッシャーといった目に見えない刺激や負担を受け、心拍数が速くなる等の反応を指す。これらの評価量は心理的あるいは肉体的負担に対しては有効な評価量であることは知られているが、この他の様々な要因によって変化することから計測の信頼度を高めるには十分な注意をする必要がある。
今回の実験では、操船環境の変化による操船者の負担変化について、時々刻々の自船の船位や操舵量との比較により、現在医学界で利用されている生理的評価法であるSNS値がどこまで評価指標となりうるか検討する。

 

 

 

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